CAN-GO!

トップ  >  インタビュー  >  人との関わりの中で自分を磨くことができる仕事

挑戦者インタビュー  2014.04.15掲載

人との関わりの中で自分を磨くことができる仕事

山田陽子さん/中野北ベタニア訪問看護ステーション(社会福祉法人慈生会)

Q.何故、訪問看護を選んだのですか?

看護学校入学前に新聞で、入院日数を減らすことで行き場がなくなりやむなく在宅で生活しているという人の記事を読んだのがきっかけです。在宅で療養生活をする人が増えることと、そういった人たちを支えることができたらと考えたから訪問看護を選びました。

Q.どのように現在の職場に入りましたか?

新卒で訪問看護に挑戦できる職場はほとんどなく、病院での臨床経験がある即戦力が求められる現場であると看護学校入学後に知りました。しかし、40歳で卒業することを考え、まずは「経験」という道よりも看護学校入学前から挑戦したいと思っていた訪問看護に直接進むべきだと思ったのです。そして、新卒で訪問看護師として学ばせてくれる職場を探し始めたところ、学校での就職面接で実習先の一つである現在の職場であるステーションの面接を受けてみないかというありがたいお話を頂き面接を受ける機会を得、就職させて頂くことができました。

Q.印象に残っている利用者さんの事例はありますか?

この一年間で、初めて亡くなったストマのある利用者さん(Aさん男性)のことが印象に残っています。Aさんは片麻痺があり独居でしたが、なるべく人の手を煩わせまいと自由の効かない体で身の回りのことを自分でやろうという姿勢を最後まで貫き通されました。Aさんは自分にも厳しい方でしたが、ケアをさせて頂く私たちにも厳しい方でした。ストマ交換の方法や手順についても自分の考えや方法を私たちに指示されました。例えば、ストマを外すときは、酢水を使って欲しい、ストマを外し洗浄した後は必ずドライヤーで乾かして欲しいなどです。一方、私たちがストマ交換以外のケアを提案しても「自分でできるから大丈夫。」と断られました。Aさんは私たち看護師の役割はストマケアが主でそれ以外のケアをしてもらうのは申し訳ないと感じていたのではないかと私は感じました。Aさんは癌の末期でしたので、徐々に体のいたるところに痛みが生じて、それが増強していき、ストマ交換の間ですら同一体位を保つことが難しくなってきました。Aさんが楽な体位を見つけてケアをしましたが、痛みの増強にはかなわなくなり、最後の方ではストマを外して休憩し、洗浄して休憩し、薬を塗ってまた休憩し、最後にやっと新しいストマを貼るといった具合でした。しかし、痛みに顔をしかめながらも休憩まで黙って耐えておられました。Aさんは痛いからと言って私たちに厳しい言葉や態度をとるということはありませんでした。ただ、ストマが短い日数で漏れた場合は厳しい言葉を聞くこともありました。Aさんの痛みに耐えている様子を見ながら、ストマ交換の回数を減らそう、手早くできるようになろうと私も必死でした。腹部の皮膚の形状、外したストマとにらめっこしながら、次貼るストマの準備をします。無事貼り終えたら、「漏れませんように。」とおまじないまでかけて帰る日々でした。一方で病状は悪化し、ついに起き上がることができなくなりました。そんな状態になっても自分のことは自分での精神を貫き入院日も自分で決めて入院され、病院で最後を迎えられました。
そんなAさんとの関わりの中で私が学んだことは、プロとしてケアを提供するということはある一定のレベルが要求されるのだということです。Aさんにとって一定レベルのケアとは次の訪問日まで漏れないストマを手早く正確に貼るということでした。私たちは利用者さんのニーズを汲み取り、そのニーズに沿ったケアを提供していかなければならないのだと学ばせていただいた事例です。

Q.単独訪問件数はどのようなペースで増えていきましたか?

4~6月はステーションの看護師さん全員の訪問に同行させていただきました。7月に1件、8月6件、9月8件、12月11件と徐々に増え、1月以降はほぼ全て単独で訪問させていただいています。

Q.職場ではどのような教育を受けてきましたか?

入職した4月は全て見学のみで、まずは訪問看護とはどういうものか、どのようなケアをしているのか見て学びました。5,6月になると1、2件の訪問先ではサブでケアをさせて頂きました。その後は同行して見学もしつつメインでケアをするといった具合に、ゆっくりと時間をかけて見て感じて考えてから動くといったプランだったと思います。振り返りは毎回行わず、必要時のみ行っていただきました。私の教育係りになってくださっていた方は認定ももっておられるので、私のどんな質問にも的確に答えてくださいましたし、私のその時のレベルにあった課題を私の様子を見ながら与えてくださっていたので、大船にのった気分で安心して学ぶことができました。そして、私たちのステーションには経験豊富な看護師さんがたくさんおられますので、いつでも誰でも質問OK!ということで、皆さん忙しい中でも時間を作って同行訪問前の説明や訪問後の私の質問に答えてくださいました。そんな環境の中、一年目は正直分からなければすぐに聞いて過ごしてきたところも多かったので、二年目は少し自分で考える力をつけていかなければと考えています。

Q.新卒や新人で訪問看護に入って良かったことは何ですか?

訪問看護では一人の利用者さんと1対1で1回の訪問で30~1時間、それを何ヶ月も何年も続けることが可能です。だから利用者さんとその家族が何を必要としていて、自分はどのようなケアを提供していこうかゆっくり考えることができます。そのように長く深く関わることができるからこそ利用者さんやその家族からいろんなことを学ばせていただける点で、新卒で新人で訪問看護に入ってよかったと思っています。

Q.新卒や新人で訪問看護に入って大変だったことは何ですか?

一つは、ケアの内容や方法、使う道具が一人一人違っており、もちろん病院実習で行っていた通りにはいかない点が大変でした。もう一つは、新卒で訪問看護に入った人が周りにいないので自分が今どの位できているべきなのか分からない点が大変と感ました。

Q.今後どのようにキャリアを形成していきたいですか?

今はまだ目の前のことで精一杯でキャリア形成についてはまだ考えていません。夢は3年経った時一人前の訪問看護師になっていることです。

Q.訪問看護に関心がある看護学生や看護師へのアドバイスをお願いします

訪問看護という分野はまだ多くの人に知れ渡っているわけではありません。訪問看護って何をするんだろう?と思われる方も多くおられると思いますが、人とじっくりゆっくり関われる看護をしたいと思う方にはぴったりだと思います。

Q.あなたにとって訪問看護とは?

単に看護師という仕事にとどまらない、人との関わりの中で自分を磨くことができる仕事だと今は思っています。

PROFILE

  • ■年齢:
    41歳
  • ■勤務先:
    中野北ベタニア訪問看護ステーション(社会福祉法人慈生会)
  • ■出身校:
    東京警察病院看護専門学校(2012年度卒業)
  • ■訪問看護をする前の臨床経験年数:
    0年
  • ■訪問看護の臨床経験年数:
    1年
  • ■訪問看護を始めた年齢:
    40歳

その他のインタビュー

挑戦者インタビュー

倒れてから対応するのではなく、 倒れる前に対応出来きる訪問看護師の道を極めたい

柴山 宜也さん/訪問看護ステーション リカバリー(Recovery International 株式会社)

キャリアインタビュー

人生を肯定的にとらえ、生きる喜びを感じられるお手伝いをすることが最大の役割

藤野 泰平さん/笑顔のおうち訪問看護ステーション

キャリアインタビュー

病気や障害をおっても、その人が望む生活を支える地域支援体制と円滑な多職種との連携体制を構築する一…

齋藤 雅子さん/恵光訪問看護ステーション(医療法人社団 川満恵光会)

キャリアインタビュー

本来看護の役割はその人らしさを大切にしながらその方の“生活を支える”ことにある

大竹 都さん/のぞみの花クリニック(在宅支援診療所 のぞみの花クリニック)

挑戦者インタビュー

一人の人間として「生きる」ことに真摯に向き合う場

長江 麻友子さん/訪問看護ステーション けやき(世田谷区社会福祉事業団)

挑戦者インタビュー

本当の看護師の役割がある場所だと知ることができた

吉岡 正善さん/梅ヶ丘訪問看護ステーション(株式会社うめケア)