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挑戦者インタビュー  2014.01.06掲載

どうしたら良い看護ができるかを思う存分悩めること

小瀨 文彰さん/ケアプロ訪問看護ステーション東京 本店(ケアプロ株式会社)

Q.何故、訪問看護を選んだのですか?

私が新卒訪問看護師の道を選んだのには2つきっかけがありました。1つは社会的な背景です。今後訪問看護の需要が高まる一方で、訪問看護師の数は伸び悩んでおり、増して24時間365日対応のステーションは非常に少ない。この課題を解決するためには、若い看護師が訪問看護に入る必要性を強く感じたことです。もう1つは、同期で「訪問看護をやりたい」という友達がたくさんいたのに、「前例がないから」「なんとなく無理そうだから」「病院で10年はやらなきゃ」と、実際に訪問看護師になる人はいなかったことです。

社会的にも需要がある、看護学生もやりたい人が多い。しかし、前例がないことや、病院の臨床経験が基本というイメージで、新卒看護師が訪問看護にチャレンジすることの障壁になっているという現状に、強く問題意識を持ちました。そのため、自分がチャレンジをすることで「前例がない」、「病院が基本」という障壁をなくして新卒訪問看護師を当たり前にしていきたいと思い、新卒で訪問看護の門を叩きました。

Q.どのように現在の職場に入りましたか?

現在の職場への入社は、大学3年生から卒業までの間、同じ会社の『ワンコイン健診』を行っている事業部でインターンをしていたことがきっかけです。就職とは全く関係なく、個人的に医療ビジネスや経営を学びに毎日会社に通っていたのですが、自分の就職の際に、訪問看護を行っている事業部から「新卒訪問看護師にチャレンジしてみないか」という話を頂き、インターン続きで入社することになりました。

Q.印象に残っている利用者さんの事例はありますか?

<両側性閉塞性下肢動脈硬化症のY様>
この方は、右足の指が壊死しているのですが、「足を切断するなら死んでやる」と言ってご自宅に帰ってこられ、自分が初めての担当になった方です。

連日訪問し壊死部の洗浄と消毒を行うのですが、日に日に壊死している親指が取れそうになってきました。そこで指が取れた後のことを聞くと、「取れた指はゴミ箱に捨てればいい。」とのことでした。しかし、いつも寂しそうに指を眺めているので、日々話し方を変えながらケアを続けました。するとある日、足を見ながら「なんでこんな病気になっちゃったんだろう」と涙目に。内心はとっても怖かったですが、病気についてどう思っているのかなどを思い切って聞くと、「本当は脱落した指もとっておきたいけど、いつも家族に迷惑ばかりかけているから、そんなわがままは言えない。」と胸の内を打ち明けて下さいました。

その後は「迷惑をかけたくない」という気持ちを尊重して、ご家族に迷惑をかけない形で脱落した指を保存しておくことになりました。とはいえ、そもそもどうやって保存するのか、保存後はどうするのかなど前例がなかったので、医師や葬儀屋などに相談。結局、医師にホルマリンを出してもらうことになり、ちょうどホルマリンを持ってきて頂いた日に指が脱落しました。翌日に訪問すると、とても満足そうに指を捨てずに済み、自分が亡くなった時に一緒に火葬してもらえることを報告して下さいました。

新卒で訪問看護をしている自分は他に訪問している看護師より知識も技術も未熟ですが、それでも自分を頼って下さり、対象者と向き合うことができ、微々たるものですが初めて「ちょっと看護らしいものが提供できたかな?」と思える事例でした。

Q.単独訪問件数はどのようなペースで増えていきましたか?

単独訪問は3ヶ月目から始まり、その月は12件行いました。その後5ヶ月目には25件行い、今後は7ヶ月目45件、10ヶ月目66件の見込みです。それ以降は18ヶ月まで単独訪問は66件にとどめ、その他はターミナルや難病の方の同行訪問を行う予定です。19ヶ月目より88件単独訪問を行い、一人立ちになります。

Q.職場ではどのような教育を受けてきましたか?

毎回の訪問後に同行した先輩看護師さんと30分程度振返りを行い、また振返りと同時に行った情報収集や関連図などへのフィードバックも頂いています。振返りの内容は、情報収集から手技、アセスメントまで様々で、単独訪問までのステップに応じた振返りがありました。

また、フィジカルイグザミネーションやBLSなどの基礎的なものについては、ステーションや外部病院などで研修を行っています。

Q.新卒や新人で訪問看護に入って良かったことは何ですか?

<先輩を独り占め!?>
訪問ではマンツーマンで先輩方より教育を受け、帰ってきても振返りなどでたくさん先輩方のお時間を頂いて看護を教えて頂けるのがとても良い点だと思います。今の職場は、新卒は自分だけなので先輩方を独り占めしてます。(笑)

<看護が悩み!!>
よく病院に就職した同期に羨ましがられるのは、「業務に追われることなく、どうしたら良い看護ができるかを思う存分悩めること」です。訪問看護は、ルーティンな業務は少ないので、とことん自分の看護について考えて、実践することができるのがよかったです。

Q.新卒や新人で訪問看護に入って大変だったことは何ですか?

<そんなことまで把握できない!!>
訪問看護では、それぞれの家で環境が違うため、対象者が一週間どんな生活を送っているか、それぞれの家のルールや物品の位置などを覚えるのが、とても大変でした。看護の基礎も分からないし、週に数回だけだし、そんな細かいところまで把握できない!!って感じでした。(笑)でも、これは新卒に限らず、臨床経験がある方でも同じようで、訪問看護に必要な情報収集スキルを付ける為の登龍門のようです。

<訪問できるのは週に数回のみ>
訪問は一日数件ありますが、同じ人の訪問は週に数回しかないので、訪問する利用者ごとにその週の学びの目標を立てて、訪問の準備・実践・振返りを行わないと得られるものが少なくなってしまいます。右も左もわからない中、間隔があく訪問を継続的に見れるようになることには苦労しましたし、まだまだこれからも課題です。

Q.今後どのようにキャリアを形成していきたいですか?

今後のキャリアは大きく2つプランがあります。

1つ目は、新卒教育プログラムを作成する、新卒教育をしているステーションを増やす活動をする等、新卒訪問看護師を増やす為の活動をすることです。実際に新卒訪看を経験したものとして、経験した人でしか見えない視点から新卒教育の促進に携われればと思っています。

2つ目は、新卒から訪問看護を経験しているものとして、自分で訪問看護ステーションを経営することです。新卒教育からステーション運営までを一貫して行えるようになりたいと思っています。

Q.訪問看護に関心がある看護学生や看護師へのアドバイスをお願いします

自分が新卒で訪問看護師を経験して感じたことは、「新卒・新人では訪問はできない」というのはある意味当たっているということ。何が当たっているかというと、自分は「新卒でもできる」と意気込んで訪問に行ったものの、やっぱり初めて現場に立つと右も左も分からず、看護の難しさを実感したからです。でも、これはきっと病院に就職しても同じことを経験したと思います。病院でも最初は何もできなかったはずです。

じゃあ、「在宅で看護師は成長できない」と言われれば、これは嘘です。訪問看護だって、いきなり一人ではなく、一人でいけるようになるまでにステップごとの教育があり、単独訪問でもフォローできるような体制があれば、新卒からでも訪問看護師として成長していけます。

今までは「病院が先、在宅は後」というのが当たり前だったので、きっと賛否両論あるかと思います。でも、これからは「新卒訪看も当たり前」になっていくので、それに向けて一緒に訪問看護を盛り上げて頂ければ嬉しいです。

Q.あなたにとって訪問看護とは?

・自己の看護実践の原点
・「新卒訪問看護師が当たり前な社会を創る」夢を実現する場

PROFILE

  • ■年齢:
    23歳
  • ■勤務先:
    ケアプロ訪問看護ステーション東京 本店(ケアプロ株式会社)
  • ■出身校:
    慶應義塾大学看護医療学部(2012年度卒業)
  • ■臨床専門分野:
    在宅看護、地域看護
  • ■訪問看護をする前の臨床経験年数:
    0年0ヶ月
  • ■訪問看護の臨床経験年数:
    0年6ヶ月
  • ■訪問看護を始めた年齢:
    22歳
  • ■ブログ・ホームページなど:
    https://www.facebook.com/ose.fumiaki

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  • ■紹介されたマスコミ媒体など:

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